黒い電話が家に送られてきた。ゴツめの外観で80年代辺りの家電のよう。贈り主を調べたいが手がかりが何もない。
せっかくなので電話線につないでみたら、日が沈む頃にベルが鳴って、とると相手は鳥だった。鳥はしずかにゆっくり話すのだけど文法が崩れ勝ちで、言ってることの半分は理解できない。どうやら街で私と出会ったと伝えたいらしい。私が自動販売機でナタデココドリンクを買ったこと等をみていたという。「悪いけどこっちは君のこと覚えてないよ」と私は答える。
こいつはどんな種類の鳥なのか、電話を贈って来たのは誰か、なぜ俺の行動を知らせたいのか、受話器をどうやって持っているか、知りたいことは多いのに鳥に話を聞く機能は乏しいようで質問に応じることなく、自分の都合を言い終えたら通話を切ってしまった。
次の日、夕陽が部屋に射し込む時刻にまた電話のベルが鳴る。声が昨日とは変わっている。別な鳥のようだ。が、話の趣旨は同じだった。その日私がどうしていたかを、空から見た報告。私は質問を諦め、話している鳥の姿を想像してみる。黒い電話だし、喋れるほど賢い鳥なんだから、こいつはカラスなんじゃないだろうか。