2021-01-01から1年間の記事一覧

あるテレビ番組の出演者を決めるオーディション会場に入った。 部屋には5人ほどの審査員が長テーブルのうしろに腰かけ並んでいて、彼らの前で候補者は1人ずつスピーチをする。話が終わると審査員はみじかいアドバイスを与える。よくあるオーディションの光景…

市役所の職員たちが駐車場に集まって車を修理しようとしている。ビートルに似た古風でこじんまりとしたその車はもともとオープンカーだったが、市民の要望で屋根をとりつけることになり、しかし担当者が車に不慣れだったために間違った方向に部品をはめ込ん…

デパートで旧友と出会った。かつて身なりに頓着のなかった彼は、洒落たスーツを自然に着こなして髪は七三で寝かしつけ、以前より見ちがえてしっかりした男にみえる。今は遠くの街に住んでいるが、今日たまたま仕事でここに来たのだという。 「夜ここでオペラ…

パソコンの電源を入れると、ひとりでに作曲アプリが立ち上がった。画面は紺色の地で占められ、白い縦線が等間隔にならび区切っている。その空間にマウスで黄色い点を配置して行けば曲の流れが出来上がる仕組みのようだ。線の少しうしろに点(それは星のように…

「ほおずルイ先生」と名乗る男の授業を受けている。本名なのかわからないが、頬ずりとかかってて良い名前だなと私は笑っていた。「ほおずルイ」のルイを素早く発音すると「ほおずリ」に短縮されて聞こえる。その響きが面白かったらしい。

長い行列に並んでいる。 列のさきには体育館があり、噂によれば今日、そのなかで役人による選別が行われているらしい。その試験に合格したものは、どのような国にも無条件で永住を許され、さらに優先的に住居を安く借りられる権利を得る。望むなら北朝鮮の市…

宇宙人の手によって心体を改造され超人化したマジシャンのナポレオンズがNHKをジャックし、我々はこれから1日にひとりずつ日本人を狩っていく、とテレビ放送で宣言した。千里眼を与えられたボナ植木(眼鏡をかけた方)が犠牲者をえらび、瞬間移動能力をもつパ…

スーパーで輪切りにされたナスが売っているのを見つけた。それは鯖寿司のように一度切られたあと元の形に揃えてパックされ、ナスとナスの間にはきっちりすべて半透明の紙が挟まっている。紙の見た目はふつうのキッチンペーパーと同じだが、どうやらそれには…

夕方、工場労働を終えてかえり支度を済ませ、建物を出たところにひとり同僚が佇んでいるのがみえた。この無精髭を生やした年配の男はいつも指導者のように堂々としてはいるが、まるで働かず何をしているのかわからないので日中私は彼を邪魔に感じていたのだ…

テレビ番組にゲストとして出演している。80歳くらいの老哲学者に向けて3人の若者が順に質問していく企画で、私はその2番目の質問者に選ばれているようだ。ゆったりとした椅子に座った学者は、1人目の問いに早口で答え、まもなく自分の番が回ってきた。 問い…

中川家の礼二と夜の街を歩いている。そろそろ夕食をとる店を決めなければならない時間だが、主導権は礼二のほうにあるようで、彼は、あの店がいいか、いや今日は休みかなぁ等と、ブツブツひとりごとを呟きながら先へ進む。私はそのあとをついていく。 いきな…

光線を当てると塩分濃度を測れる機械が床に転がっている。私はそれを拾い上げて、自分の腕にかざしてみると、モニターに「7%」と表示された。測定器の見た目は赤外線温度計とそっくりである。おそらく知らない人がみたらみんなそう思うだろう。 外は大雨で…

タブレットをつかってゲーム配信をしている。 それは細い足場を渡りながら建物を修復していく一人称視点のゲームで、私はときどき足を滑らせ転げ落ちては上を目指して進み、またひっくり返る。なかなかうまくいかない様子をみて、3人の視聴者が応援のコメン…

まるい手鏡を持って自分の顔をみている。ふざけて顔の左側だけ動かしてみると、いつもより眉が高く上がることに気づいた。そのとき、額にボールペンを滑らせ描いたような皺が一本現れた。いつのまに──こんな深い皺ができていたとは知らなかった。じっくり顔…

知人とすき焼きを食べている。我々は鍋に箸を入れて、ひとつずつ交代に具をとるが、その際に少しも音を立ててはならない、将棋崩しのようなゲームをしているらしかった。私はエリンギをひとつ掴もうとした。そのとき箸がすべりそうになり、慌てて力を入れる…

部屋のタンスの上に大きな鳥の巣ができていて、なかで何かがモソモソと動いているのが見える。顔を寄せてみれば、居たのは1匹のハリネズミで、それはゆっくりと顔を上げて、体を反らし、こちらに腹を見せようとしている。 まさかハリネズミが迷い込んで来る…

ダブルベッドの上に寝転がり、頭を枕にのせる。額には文鳥が一羽とまって、じっと暗い窓の外をみている。私はひどく疲れて体を動かすことができない。今日やるべきことはやり終えたし、もう水一杯要らない。何もせずこのまま眠れたならそれでいい。意識が遠…

草野球のバッターボックスに立っている。私は通常の半分くらいの長さしかないバットを片手に持って、羽子板を振るようにスウィングする。と、ボールは大きくフライしてそのままスタンドに入っていった。かるい手応えと飛距離がつり合わない、妙な感じがする…

テレビをみているとドラマのロケ地が近所の寺であることに気づき、ああ久しぶりに行ってみたいなと思っているうちに、いつの間にか私は画面の中へワープしていた。その寺はまわりを鬱蒼とした森に囲まれ、記憶にあるよりずっと建物の数が多く、目を飽きさせ…

ニラ玉を作って床に中華鍋を放置していたら火種が残っていたようで、鍋の中から炎が立った。炎の下には鉄を溶かしたように真っ赤なスープ状のものが煮えていて、これが漏れたらおそらく火事が起こるのは避けられない。鍋の横に兄が寝ていることに気付き、私…

薬局に袋入りの「パク」のしっぽが売られているのを見つけた。パクとは獏の別名らしい。袋には先端が三角になった(悪魔のそれを思わせる)しっぽが平たくのされた絵が描かれている。それはコンビニのつまみコーナーに置かれていそうなデザインのパッケージで…

晴れた空の下で運動会が行われている。中学生くらいの子供たちがトラックを走り、大人たちが歓声を投げる。グラウンドの隅にある25メートルプールが開放されていて、私は競技を観ながらそこで立ち泳ぎをしていた。クロールではもたもたしてしまうが、背泳ぎ…

雑居ビルの階段を上ると、ガラス越しに段ボールが雑然と並んでいる店がみえた。そこは開店前のレコード屋のようで、中にはひとり男性店員がいた。私は店内に入った。我々はどちらからともなく握手を交わし、友人同士のように背中を叩きあって、それから店員…

知人4人と町の大衆食堂にいる。すでに食事を終えているようで、テーブルにはなにも置かれていない。そこに高倉健が現れて、私の隣に座った。病気や怪我があったのだろうか、高倉健の目は落ちくぼみ、唇は腫れあがり皮膚は垂れ、彼が健康を損ねているのは明ら…

我が家に大学生15人ほどがやって来た。彼らは男女半々で、同じサークルのメンバーらしい。何かもてなした方がいいと思うけれど、みんなそれぞれ飲み物を手にしているし、誰からも挨拶なく、私に興味を持っていない様子なので話しかけづらい。若者たちは数人…

金髪をこんもり膨らませた90年代ホスト風の男が、彼の自宅キッチンで料理しているのをみている。ブロッコリーをフライパンの隅で炒め、真ん中にはご飯をよそって入れ、それをへらで薄く伸ばし、上に海苔を敷いていく。それから鍋肌に水滴をいれるとジュワッ…

ひとけのない夜道を歩いていると、坂の下から人の走る音が近づいてきた。空を覆う黒い雲よりも暗い色の服を着た男が靴音を止めて、背後から私をはがい締めにした。黒い男の身長は、私の肩よりも低い。彼の鼻が背骨にあたり、くすぐったい息づかいを感じる。…

祖母と植物園を散策している。あたりの木々はみなよく茂り、脇には苔のついた岩がところどころ顔を出して、上下どこをみても柔らかな緑色が目に入ってくる。すれ違う人たちは笑顔で新緑の季節を楽しんでいるようだった。祖母は「いい場所があるから」と言っ…

私は知らない街の橋を渡って山の方へ向かっていた。次第に日が暮れてきて心細くなり、高台に建つショッピングモールに入った。おそらくあまり立地が良くないからだろう、中はがらんとして活気がみられず、テナントは募集中だらけで、ここの経営がうまくいっ…

海に建てられたマンションの中にいる。このマンションは下半分が海中に沈み、上半分は海上に出て、下側の窓からは魚の泳ぐ姿をみることができるのだという。私は高い階から水平線に触れそうな位置の太陽を眺めていた。今は午後なので夕日のはずなのだが、太…