2022-01-01から1年間の記事一覧

部屋の掃除をしていて、棚の裏に挟まっている青い封筒を2つ見つけた。これは10年以上前に契約していたTSUTAYA定額宅配レンタルの封筒だ、と気づき、手にとってみると、中にそれぞれ3枚ほどのCDかDVDかが入っている重みを感じる。少なくとも10年だ。いったい…

近所にマクドナルドの新店舗ができんだってよ、と電話で知り合いから教えられた。それは世界で初めて湖の底に建てられたマクドナルドであり、開店特別メニューとしてしばらくのあいだチキンナゲットの黒酢あんかけを売り出すのだという。 ぜひ味わってみたい…

街から遠くはなれて、私は小さな土蔵を借りて生活している。レコードを10枚ほど軒先の棚に置いていたはずだけれど、外にでて見ると、それらは全て盗まれてしまっていた。まわりには木が生い茂って門はない。だから誰でもどこからでも忍び込める構造ではある…

部屋に暖房をいれて待ってみても外で浴びた冷気が体に居座るので布団に潜りこんだが、毛布のぬくもりは芯まで届かない。とりわけ右足の指先からふくらはぎにかけて氷のように冷たい。あまりにも右足がしびれるから、悪寒の根本原因はここなのではないかと思…

とある企業がスズメ忍者という名のキャラクターを売り出すつもりらしく、私はその衣装制作に携わることになった。 まずは雀の特徴である尖ったくちばしを立体マスクで表してみようと布を選ぶが、その色を本物のとおり黒でいくか、それとも黄土色にするか悩ま…

知り合ったばかりの女性と知らない田舎町を巡っている。左右をセイタカアワダチソウが占領した畦道を通りながら、廃屋の屋根にかぶさるほど大きな銀杏の木が金色の葉を散らしているのがみえた。いくつかの商店を横切ったが、いずれも中は暗く静かで営業して…

友達と旅行していたはずが間違った駅で降りて1人になってしまった。次の列車がくるのは3時間後らしいから、ちかくのデパートで時間をつぶそうと思った。 建物に入ってすぐ、食レポ番組の撮影と出くわした。邪魔にならないように避けたけれど、移動した先でま…

席がひとつだけのこじんまりとした散髪屋で髭を剃ってもらっている。手際よく剃刀をあてる店主の姿を薄目で眺め(しっかり目を開こうとはするけれどうまくいかなかった)、印象付けられるのは彼の額の広さだった。色白でつるんとした曲線をつくる額は大きな鳥…

雑居ビルの屋上に建つプレハブ小屋を借りて生活している。ここは静かで眺めはいいし、サイズもちょうどいいし、窓を開ければ涼しい風にもあたれて住み心地は悪くない。 そこに、小学生高学年くらいの男の子たち5人ほどが自転車に乗ってやってきて──どこから…

ボクシングの試合に出なくてはならないらしい。控室は用意されておらず、私はこれから戦う相手とおなじ空間にいて世間話をしている。相手は山本kidに似た顔で、身長は低いがたくましく筋肉が盛り上がり、どうみても自分より強い人間と思われる。というかその…

人の流れにのって細い道を歩いている。まわりはみんな駆け足か早歩きで急ぎ、競争しているような雰囲気だった。自分はそれに参加した憶えはないし、慌てることはないと考えてゆっくり進んでいるが、半面では走ろうと思ってしかし足が言うことを聞かないもど…

不良の先輩2人と一緒にバイクで山道を走っている。 彼らは余裕をもってスピードを保ったまま複雑なカーブを曲がることができるが、慣れない私は置いていかれないように動きを真似るのと、事故の恐怖心をふり払おうとするのに精一杯で、景色を楽しむような状…

大きなホテルに閉じ込められている。 このホテルはカードキーを使って外に出る仕組みになっているが、私はそれを持っていない。ということは、どうも許可を得ず忍びこんでしまったらしい。 こうなればもう、誰かがガラスのドアを開けたのに合わせて、気づか…

女性がひとり布団に横たわり、薄目でこちらを見ている。その側であぐらをかいて座る私は、細い棒を右手に握っている。棒の先には茶色く愛想ない紙風船がついていて、私は手首を返し、それを彼女の体の上で左右に往復させる。ゆっくりと、うちわを扇ぐように…

フローリングの床に、ぽっかりとマンホールほどの穴が空いている。垂れたロープを握って降りると、下の部屋では、飼い猫のたまちゃんが箪笥に乗って毛繕いしていた。たまちゃんは私に気づいた様子で少しのあいだ視線を合わせ、それから目を細めてうしろをみ…

背中に乗れそうなほど大きな豚を連れて、背の高い男がやって来た。彼は立ち止まると、両手で豚の眉間あたりをつかんで、そこから鼻筋の中間あたりまで軽く腕をすべらせた。するとその部分の皮が、靴下をおろしたようにきれいに剥がれてしまった。鼻の中には…

町内の寄り合いに参加して、同年代の人たちと話をしている。それぞれコロナ感染予防の距離を保っているがマスクはしていない。もともとこれといった目的のない会だからみんな自由に喋っていて、特に伝えたいことがない自分は聞き役に回っていた。やがて話題…

豪奢なペルシャ絨毯に膝をついて、20個ほどのガラス玉をドミノのように並べている。遠くに小さい球を、近くになるほど大きな玉を置く。私はそれでうまく惑星直列を表すことができればいいと思っていたけれど、しかし考えてみれば星の大きさは距離に因らずま…

春の渓流に足を浸して、父と兄が釣りをしている。他にも川の中に釣り人が5人ほどちらほらとみえて、河原では老夫婦がシートをひろげてお弁当をつまむ、穏やかな景色が広がっていた。遠く上流には若者がかたまってバーベキューか何かをしているようだがはっき…

3人の友人と東京ドームまで野球観戦に向かう。自分以外のひとは何度かドームに行ったことがあるらしく、彼らは道中、球場では歓声がよく響くんだとか、客席の幅がどうなっているかといった情報を教えてくれた。 球場についてまず目に入ったのは、ピッチャー…

愛媛県の道路網は不必要にこまかく作られていて、ながく走るほどドライバーはうんざりして思考を鈍化させられる。県民はそれを「愛媛にぶり」と呼ぶのです。とアナウンサーがいった。看板はニュース番組なのだが、そこに公共事業の暴走を追及するかたい調子…

飛行機内を模したセットでコント番組を撮っている。飛行中に窓が割れてしまった設定のコントらしく、私は気圧差で外へ吸い込まれるのに抵抗するひとを演じなければならない。台本を書いた芸人がカメラの横にしゃがんでいて、扇風機をこちらにあてながら手ぶ…

ポロさんが家にやってきた。ポロさんはメキシコ人の画家で、私が幼い頃ときどき訪ねてきては父と議論(たとえば国による画材の違いについて)をして、それが終わると私の頭をなでて帰っていく、穏やかな目をしたおじさんだった。彼の日本語はたどたどしいが、…

夢の中で、私はサッカー部の部長になっている。 武田という名前の1年生が部室まで入部の挨拶に来た。私は、よろしく、と肩を叩き、グラウンドに出てパス交換をしたが、間もなく彼が、すでにどこをとっても自分より優れた選手であることがわかった。見たこと…

バス停の待合所にいる。古びた木造建築の二階座敷。私の他に2つのグループがそれほど広くない場所を分け合っている。あぐらをかいて夜の景色を眺めていると、80くらいのおばあさんが耳打ちするように手を口に添えて「あなたのところはどのような亡くなり方…

学生時代に通っていた予備校の講師と高層ホテルにいる。大人になってもまだたくさん先生からは学べることがあるだろう、と私は期待して、いくつか社会情勢について真面目な質問をして水を向ける。しかし何度試みても彼は脈略を欠いた、要領を得ない返事をす…