2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

猫に誘われて古びた小さなビルに入る。猫を追いかけていると言うよりは、私はその猫の意思と知性を頼って行き場所を決めてもらっている。知らない街でどこへ行っていいかわからない、大人に手を引かれる迷子のような気分だった。 猫はビルの窓から、似たよう…

美術館の地下室で暮らす男の噂を聞いた。その美術館は幅の広い川の中洲にたって両岸とは橋で繋がれている。外観は京都市美術館に似て、和洋折衷の重厚な造り。男はこの川にそびえる美術館への愛にとりつかれてしまい、館長に頼みこんで地下の狭い部屋を寝ぐ…

大きな川を渡るには

夢のなかでよくテレポートする。たとえばぼくは見覚えのない薄暗い部屋にいて、ドアは外からロックされ出ることができない。うろうろと窓を探しているうち、足元に銀色の排水溝をみつけ、そこに顔を近づけ精神を集中するとみるみる体が液状化して、つぎの瞬…