起きるとテーブルで父親が食事していて、そのそばで初老の男がなにか1人で話をしている。中折れ帽と灰色のスーツという格好で、地味だけどデザインから舞台用の服であることが伝わってくる。姿勢も正しく話す歯切れもいい。父は彼のほうに目をやらずに卵料理をたべていて、無関心を装っているようにさえみえる。
どんな話をしてるんだろう、と耳をかたむけたところで話は終わってしまい、父は引き出しから5000円札をだして男にわたす。えらく高いものだな。けどああいうプロが1人のためにきてるんだから当たり前か。と私は思う。
「いやあ良い話をきいた」と父がいう。