バーでタモリウイスキーを飲んでいる。夜が深まるにつれタモリは姿勢を低くしていって、やがてカウンターテーブルにひだりの頬を付けたままこちらを向いて喋っていたが、やさしい口調の声はとぎれとぎれになり、ついには話の途中で黙ってしまう。サングラスを通してみる目は薄く開いているようだけど、じっくり確認すると、まつ毛の加減でそう見えているだけのようにも思える。隣に座る女性が「タモさん司会中に寝たの初めてですね」といって、スマホで検索を始めた。「やっぱり、ほら、司会中に寝たって記録はないみたい。初めてだ」と嬉しそうだ。司会中だったのか。しかしどこにカメラがあるんだろう、と周りを見渡すと、オレンジの灯りがゆらゆらとそこらじゅうに揺れている以外は真っ暗闇で、まるで灯籠流しの夜みたいだなと思う。

 

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