香辛料を扱った文庫本のシリーズが本屋の棚にずらっと20冊ほど並んでいる。タイトルはどれも「欺く」で、それはスパイスがひとの舌を翻弄するところから来ているらしい。欺の字が鋭角で細いデザイン性の高いフォントであるところには、否定的な言葉を洒落てみせようとする意図が感じられ、自分にはそれがギリギリ成功しているようにみえる。1冊毎にひとつの香辛料の情報が、歴史、産地、味、どんな料理に使われるか、具体的なレシピ、等さまざまな角度からまとめられている、このシリーズは存在する全ての香辛料を網羅するまで続く計画のようだ。表紙にはそれぞれ別のイラストが描かれていて、たとえば花椒の本には中国の皇帝の絵、ターメリックはヒンドゥの神といった具合に、一種の擬人(神)化によって味や薬効の特徴が喩えられ、そのキャラクターは本の中でも案内役としてところどころポイントを解説するために登場する。

 

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