晴れた空の下で運動会が行われている。中学生くらいの子供たちがトラックを走り、大人たちが歓声を投げる。グラウンドの隅にある25メートルプールが開放されていて、私は競技を観ながらそこで立ち泳ぎをしていた。クロールではもたもたしてしまうが、背泳ぎにかえると良い速度が出る。そのまま羽ばたくように水を掻けばさらに速くなり、両腕のタイミングをわずかにずらすと、ほとんど体を投げ出されるように勢いよく進んだ。あまり力を入れていないのに、3回掻くだけでプールの端から端まで到達してしまう。これは新しい泳法を発見したのではないか、と得意な気持ちになったが、私をみて驚く人はいないので、これくらい誰にでもできることなんだろうと思いなおす。何にせよ、魚のように泳げるのは気分がいいし、それに浸れれば十分だ。もこもこ立体的にみえる小さな雲がまばらに浮いている空を眺め、声援と子供のはしゃぐ声を聞きながら、何度もプールを往復する。あがったら麦茶を飲みたいと思うが、このままずっと泳いでいるのも悪くない。

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