ニラ玉を作って床に中華鍋を放置していたら火種が残っていたようで、鍋の中から炎が立った。炎の下には鉄を溶かしたように真っ赤なスープ状のものが煮えていて、これが漏れたらおそらく火事が起こるのは避けられない。鍋の横に兄が寝ていることに気付き、私は慌てて肩をゆすって起こした。「えらいことになってて」と私がいうと、兄は「危ないな。よし」といって鍋を両手でつかんだが、当然素手で持てるわけがなく「熱い熱い」といって騒ぎはじめた。私は布巾を手に巻いて鍋をもちあげ、水の入った桶にいれると、あっけないほどあっさり鎮火した。危ないところだった。兄の手は大丈夫だろうか。それにしても火を吹いている鍋を手づかみするとは、いくら寝ぼけてたとは言ってもちょっと迂闊すぎるんじゃないだろうか。

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