とある企業がスズメ忍者という名のキャラクターを売り出すつもりらしく、私はその衣装制作に携わることになった。

まずは雀の特徴である尖ったくちばしを立体マスクで表してみようと布を選ぶが、その色を本物のとおり黒でいくか、それとも黄土色にするか悩ましい。だれかモデルがいればいいのに、と思っていると、私の側にダイアンのユースケが立っていたので、頼んで手伝ってもらうことにした。頭巾と合わせてみると黄土色のほうがやわらかく見えて良いように思え、そこから方向性が定まってきた。かわいくいこう。鳥の羽は、ちょうど忍者だから、広げればむささびの術の格好になるようにマントを縫い込んでしまえばいい。

あっという間にすべての染めと縫製が完了した。コスチュームを身につけたユースケをみて、これはとんでもない人気者が誕生することになるぞと、私の心は達成感でいっぱいになった。いつも遠くを見るような厚ぼったい目とシャープなマスクとのバランスは愛嬌があるし、なによりぽっちゃりした丸い腹が雀のイメージにぴったりだ。このようにたっぷり質量のある人が空を飛んだなら忍術の不思議も際立つだろう。重さこそ、浮遊感の説得力になる。

私はユースケに握手を求めたい気持ちになっていた。これは2人で作り上げたデザインなのだ。スズメ忍者を演じる役者は、誰がなんと言おうと、もう彼をおいて他にはあり得ない。