瀬戸内海の小さな島にいる。何人かで旅行しているようで、私は上司っぽい人と海辺で水彩風景画を描いている。海は大荒れで、ごつごつした黒い岩場に高波がうちつけて、我々まで届きそうなほどだ。
「どうせなら海の向こうに四国っぽいものを描いたらどうだ」と上司がいう。「そうですね」と答えたものの、海のむこうに見えるほど巨大な四国っぽいものが何も思いつかない。
考えながら海を眺めていると、岩場のすぐ近くを木造の船(遣唐使とか、七福神とかが乗ってそうな、古い型で、美しい船)が、勢い良く通りさった。
「今の船、あんな近くまできて大丈夫なんですかね」と私は上司に尋ねる。「あれがここの島の名物だよ。ずっと岩場ギリギリを通って島を一周するの。君も乗ってみるか」「いやー駄目です。怖いですよ。乗るといっても岩場に降りる勇気さえないですし…」