祖父が夢に現れる。顔は靄がかってはっきりとは見えないが眼鏡と笑うとき覗く歯の形で祖父だとわかる。私は自分が夢をみていることも、祖父がもう亡くなっていることも認識していた。

どこからともなく50年代ポップス調の曲が流れ、祖父と私はメロディーに乗って交互に歌い継ぐ。歌詞を好きに変えて良いきまりで、いつの間にかそれは歌を借りた会話に変わっていく。けれども音楽が終われば別れなくてはならない(となぜか確信している)。私はその曲のテンポが速いことにがっかりする。バラードならもっとしっかり言葉を選べるだろうし、長い時間話していられるのに。