誰か知らない人の夢の中にいる。

私の体は濁流に操られてどこへ行くかわからない。右も左も泥水が渦をまいているけど、そこには不思議とさわやかな清潔感があり、息苦しさはない。チョコレート製の霧のなかにいるような甘くてなめらかな感触のなか、私は「誰か」の夢を少しでも見晴らしのいいものに変えようと、茶色い膜を手でかいている。なにか別な流れをつくることができれば夢はもっと豊かなものになるはずだ。という意識と、この茶色を発生させている源がなにか知りたい好奇心を覚えて、高揚し、次第に泳ぐような足の動きが加わっていく。そのうち自分がベッドの中にいることに気づいたけれど、それでも茶色の世界を半分さまよい、しばらくして体に汗をかいている自覚と共に目がさめた。

 

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