金髪をこんもり膨らませた90年代ホスト風の男が、彼の自宅キッチンで料理しているのをみている。ブロッコリーをフライパンの隅で炒め、真ん中にはご飯をよそって入れ、それをへらで薄く伸ばし、上に海苔を敷いていく。それから鍋肌に水滴をいれるとジュワッと音がして、先ほどの平になったご飯が、水が蒸発した地点にむかって折られながら勝手に集合して、あっという間におにぎりが完成した。手品をみている気分だったが、男は涼しい顔で「低気圧」とだけつぶやいた。水蒸気を発生させて気圧の変化を起こし、それに米がひっぱられた、というカラクリのようだ。そんな調理テクニックがあったとは知らなかった。私は気圧のメカニズムを思い出して考えてみるが、しかしどうも今みたことを納得しきれないでいた。

 

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