部屋のタンスの上に大きな鳥の巣ができていて、なかで何かがモソモソと動いているのが見える。顔を寄せてみれば、居たのは1匹のハリネズミで、それはゆっくりと顔を上げて、体を反らし、こちらに腹を見せようとしている。

まさかハリネズミが迷い込んで来るとは……。しかし1度飼ってみたいとも思っていたからちょうどいい、外に出しても飢えてしまうだろうし、この子を家族として迎えようじゃないか、と思いじっくり観察しているうちに、ハリネズミの腹の下にはまだ長く皮膚がつながっていて、その下にべつな、中型犬くらいの大きさの、茶色い毛をもつ体が動いているのに気がついた。

いままでハリネズミだと思っていたものは全体にとっての頭部でしかない。そうか、この動物の正体はイタチなのだ。ハリネズミの顔を持った茶色い動物、は本来名付けようもないキメラだが、私は疑いなくそれをイタチだと信じていた。

 

イタチは巣から這い出し、こちらをみたかと思うと二足で姿勢よく立ち上がり、長い尻尾を数度振ってみせた。顔だけ見ればかわいらしく愛想がいいけれど、しかしイタチは静かに殺気立って近くにいるものを攻撃したがっている、ものものしい眼差しを感じる。やばいな、逃げなくては、と思った瞬間、イタチはこちらの懐に入り込み、私の肩にみえない鎌を刺した。

このままでは殺されてしまう。

台所まで走って逃げたあと、鳥と猫が心配になってきた。放っておいたらみんなイタチの獲物になってしまうかもしれない。

イタチは首のあたりからサーチライトのような光を放って、周囲を3Dスキャンしているようだ。種が組み合わされているだけでなく、戦うために最適化された動物と機械のハイブリッドでもあるわけだ。どうしたってこんな相手に敵うはずがない。助けを呼びたいが、首のあたりが硬くなり声がうまく出ない。

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