部屋の掃除をしていて、棚の裏に挟まっている青い封筒を2つ見つけた。これは10年以上前に契約していたTSUTAYA定額宅配レンタルの封筒だ、と気づき、手にとってみると、中にそれぞれ3枚ほどのCDかDVDかが入っている重みを感じる。少なくとも10年だ。いったいどれほど延滞料が嵩んでいるのかと、想像するのが恐ろしい。

普通に考るならすぐ問い合わせすべきなのだろうけど。しかしこの長期間なにも連絡がなかったのだからTSUTAYAが私を忘れている可能性は大いにある。もしそうだとしたら、こちらとしても封筒を見なかったことにしてやり過ごせば問題ないのかも知れない、けれどもそれは同時に、いつか相手が思い出してしまったときに払う更なるツケを溜め続けることであるから、どちらを選ぼうが未来が暗いことに変わりない。こんな年の瀬のタイミングで厄介なものを掘り出したくなかったと思う。

インターホンが鳴った。戸を開けると、配達員が白い箱をもって立っていた。受け取って開けてみれば、中には大きなバウムクーヘンがひとつ。それに手紙が添えられている。誰が書いたのかはわからないが文面によれば、このバウムクーヘンは私の伯父さんが変身したものであり、我々としては処置に困るので、親族、つまり私の元へ送ることにしたのだという。人間をバウムクーヘンに変身させるには、バウムクーヘンを作るさいに使う「ゴシゴシする機械」でゴシゴシするだけで済むらしい。