町内の寄り合いに参加して、同年代の人たちと話をしている。それぞれコロナ感染予防の距離を保っているがマスクはしていない。もともとこれといった目的のない会だからみんな自由に喋っていて、特に伝えたいことがない自分は聞き役に回っていた。やがて話題…

豪奢なペルシャ絨毯に膝をついて、20個ほどのガラス玉をドミノのように並べている。遠くに小さい球を、近くになるほど大きな玉を置く。私はそれでうまく惑星直列を表すことができればいいと思っていたけれど、しかし考えてみれば星の大きさは距離に因らずま…

春の渓流に足を浸して、父と兄が釣りをしている。他にも川の中に釣り人が5人ほどちらほらとみえて、河原では老夫婦がシートをひろげてお弁当をつまむ、穏やかな景色が広がっていた。遠く上流には若者がかたまってバーベキューか何かをしているようだがはっき…

3人の友人と東京ドームまで野球観戦に向かう。自分以外のひとは何度かドームに行ったことがあるらしく、彼らは道中、球場では歓声がよく響くんだとか、客席の幅がどうなっているかといった情報を教えてくれた。 球場についてまず目に入ったのは、ピッチャー…

愛媛県の道路網は不必要にこまかく作られていて、ながく走るほどドライバーはうんざりして思考を鈍化させられる。県民はそれを「愛媛にぶり」と呼ぶのです。とアナウンサーがいった。看板はニュース番組なのだが、そこに公共事業の暴走を追及するかたい調子…

飛行機内を模したセットでコント番組を撮っている。飛行中に窓が割れてしまった設定のコントらしく、私は気圧差で外へ吸い込まれるのに抵抗するひとを演じなければならない。台本を書いた芸人がカメラの横にしゃがんでいて、扇風機をこちらにあてながら手ぶ…

ポロさんが家にやってきた。ポロさんはメキシコ人の画家で、私が幼い頃ときどき訪ねてきては父と議論(たとえば国による画材の違いについて)をして、それが終わると私の頭をなでて帰っていく、穏やかな目をしたおじさんだった。彼の日本語はたどたどしいが、…

夢の中で、私はサッカー部の部長になっている。 武田という名前の1年生が部室まで入部の挨拶に来た。私は、よろしく、と肩を叩き、グラウンドに出てパス交換をしたが、間もなく彼が、すでにどこをとっても自分より優れた選手であることがわかった。見たこと…

バス停の待合所にいる。古びた木造建築の二階座敷。私の他に2つのグループがそれほど広くない場所を分け合っている。あぐらをかいて夜の景色を眺めていると、80くらいのおばあさんが耳打ちするように手を口に添えて「あなたのところはどのような亡くなり方…

学生時代に通っていた予備校の講師と高層ホテルにいる。大人になってもまだたくさん先生からは学べることがあるだろう、と私は期待して、いくつか社会情勢について真面目な質問をして水を向ける。しかし何度試みても彼は脈略を欠いた、要領を得ない返事をす…

あるテレビ番組の出演者を決めるオーディション会場に入った。 部屋には5人ほどの審査員が長テーブルのうしろに腰かけ並んでいて、彼らの前で候補者は1人ずつスピーチをする。話が終わると審査員はみじかいアドバイスを与える。よくあるオーディションの光景…

市役所の職員たちが駐車場に集まって車を修理しようとしている。ビートルに似た古風でこじんまりとしたその車はもともとオープンカーだったが、市民の要望で屋根をとりつけることになり、しかし担当者が車に不慣れだったために間違った方向に部品をはめ込ん…

デパートで旧友と出会った。かつて身なりに頓着のなかった彼は、洒落たスーツを自然に着こなして髪は七三で寝かしつけ、以前より見ちがえてしっかりした男にみえる。今は遠くの街に住んでいるが、今日たまたま仕事でここに来たのだという。 「夜ここでオペラ…

パソコンの電源を入れると、ひとりでに作曲アプリが立ち上がった。画面は紺色の地で占められ、白い縦線が等間隔にならび区切っている。その空間にマウスで黄色い点を配置して行けば曲の流れが出来上がる仕組みのようだ。線の少しうしろに点(それは星のように…

「ほおずルイ先生」と名乗る男の授業を受けている。本名なのかわからないが、頬ずりとかかってて良い名前だなと私は笑っていた。「ほおずルイ」のルイを素早く発音すると「ほおずリ」に短縮されて聞こえる。その響きが面白かったらしい。

長い行列に並んでいる。 列のさきには体育館があり、噂によれば今日、そのなかで役人による選別が行われているらしい。その試験に合格したものは、どのような国にも無条件で永住を許され、さらに優先的に住居を安く借りられる権利を得る。望むなら北朝鮮の市…

宇宙人の手によって心体を改造され超人化したマジシャンのナポレオンズがNHKをジャックし、我々はこれから1日にひとりずつ日本人を狩っていく、とテレビ放送で宣言した。千里眼を与えられたボナ植木(眼鏡をかけた方)が犠牲者をえらび、瞬間移動能力をもつパ…

スーパーで輪切りにされたナスが売っているのを見つけた。それは鯖寿司のように一度切られたあと元の形に揃えてパックされ、ナスとナスの間にはきっちりすべて半透明の紙が挟まっている。紙の見た目はふつうのキッチンペーパーと同じだが、どうやらそれには…

夕方、工場労働を終えてかえり支度を済ませ、建物を出たところにひとり同僚が佇んでいるのがみえた。この無精髭を生やした年配の男はいつも指導者のように堂々としてはいるが、まるで働かず何をしているのかわからないので日中私は彼を邪魔に感じていたのだ…

テレビ番組にゲストとして出演している。80歳くらいの老哲学者に向けて3人の若者が順に質問していく企画で、私はその2番目の質問者に選ばれているようだ。ゆったりとした椅子に座った学者は、1人目の問いに早口で答え、まもなく自分の番が回ってきた。 問い…

中川家の礼二と夜の街を歩いている。そろそろ夕食をとる店を決めなければならない時間だが、主導権は礼二のほうにあるようで、彼は、あの店がいいか、いや今日は休みかなぁ等と、ブツブツひとりごとを呟きながら先へ進む。私はそのあとをついていく。 いきな…

光線を当てると塩分濃度を測れる機械が床に転がっている。私はそれを拾い上げて、自分の腕にかざしてみると、モニターに「7%」と表示された。測定器の見た目は赤外線温度計とそっくりである。おそらく知らない人がみたらみんなそう思うだろう。 外は大雨で…

タブレットをつかってゲーム配信をしている。 それは細い足場を渡りながら建物を修復していく一人称視点のゲームで、私はときどき足を滑らせ転げ落ちては上を目指して進み、またひっくり返る。なかなかうまくいかない様子をみて、3人の視聴者が応援のコメン…

まるい手鏡を持って自分の顔をみている。ふざけて顔の左側だけ動かしてみると、いつもより眉が高く上がることに気づいた。そのとき、額にボールペンを滑らせ描いたような皺が一本現れた。いつのまに──こんな深い皺ができていたとは知らなかった。じっくり顔…

知人とすき焼きを食べている。我々は鍋に箸を入れて、ひとつずつ交代に具をとるが、その際に少しも音を立ててはならない、将棋崩しのようなゲームをしているらしかった。私はエリンギをひとつ掴もうとした。そのとき箸がすべりそうになり、慌てて力を入れる…

部屋のタンスの上に大きな鳥の巣ができていて、なかで何かがモソモソと動いているのが見える。顔を寄せてみれば、居たのは1匹のハリネズミで、それはゆっくりと顔を上げて、体を反らし、こちらに腹を見せようとしている。 まさかハリネズミが迷い込んで来る…

ダブルベッドの上に寝転がり、頭を枕にのせる。額には文鳥が一羽とまって、じっと暗い窓の外をみている。私はひどく疲れて体を動かすことができない。今日やるべきことはやり終えたし、もう水一杯要らない。何もせずこのまま眠れたならそれでいい。意識が遠…

草野球のバッターボックスに立っている。私は通常の半分くらいの長さしかないバットを片手に持って、羽子板を振るようにスウィングする。と、ボールは大きくフライしてそのままスタンドに入っていった。かるい手応えと飛距離がつり合わない、妙な感じがする…

テレビをみているとドラマのロケ地が近所の寺であることに気づき、ああ久しぶりに行ってみたいなと思っているうちに、いつの間にか私は画面の中へワープしていた。その寺はまわりを鬱蒼とした森に囲まれ、記憶にあるよりずっと建物の数が多く、目を飽きさせ…

ニラ玉を作って床に中華鍋を放置していたら火種が残っていたようで、鍋の中から炎が立った。炎の下には鉄を溶かしたように真っ赤なスープ状のものが煮えていて、これが漏れたらおそらく火事が起こるのは避けられない。鍋の横に兄が寝ていることに気付き、私…